2018年4月18日水曜日

スタンフォード哲学事典の「言語行為」を訳読しよう #07

つづき.前回はこちら

オースティンの5分類は原文では箇条書きになっていないけれど,ここでは見やすくするために箇条書きにしてある.



---- ここから訳文 ----

3. 発語内効力の諸相


オースティンは発語内効力を5つの範疇にわけている:

  • 判定宣告型 (verdictives):話者が宣告を述べるもの.e.g. 無罪宣告,診断
  • 権限行使型 (exercitives):話者が権限・権利/影響力を行使するもの.e.g. 破門宣告,辞任
  • 行為拘束型 (commissives):話者がなんらかの目的や指針にみずからをしばりつけるもの.e.g. 約束,賭け
  • 態度表明型 (behavitives):態度や社会的行動に関わる.e.g. 謝罪,乾杯
  • 言明解説型 (expositives):話者が推論の筋道にじぶんの発話がどうおさまるか明らかにするもの.e.g. 仮定,定義


この分類が満足いくものではないと考えていることをオースティンは明言しているし,サールはオースティンの分類を主に2つの点で批判している.第一に,オースティンの方法は不必要に辞書編纂的にすぎ,発語内行為の範囲と限界については英語その他の言語で発語内動詞を研究すればわかると想定している.だが,サールの所見では,たとえばスワヒリ語なりベンガル語なりの特定言語では動詞で名付けられていない発語内行為がありうることや,いかなる言語でも名付けられていない発語内行為がありうることは,まったく除外されない.同様に,同義でない2つの発語内動詞がそれでも同じ1つの発語内行為を名付けている場合もありうる.

第二に,サールの議論によれば,オースティンが挙げた範疇どうしを区別する原則がはっきりしない.たとえば,態度表明型は,ほぼ一貫した原則なしに異質なものを混在させているように見える.同様に,分類の範疇は相互排他的だと期待されるにもかかわらず,「記述する」('describe') は判定宣告型と言明解説型の両方に該当するように見える.もっと一般的に言えば,オースティンがそれぞれの範疇について簡潔に述べた解説は,彼が言うように範疇どうしの区分をすることが根本的な特徴をとらえたものになる理由について,なんら指針をもたらさない.サールは比較的に明瞭な区別の原則にもとづいて言語行為の新しい範疇分類を提示している.この分類を理解するには,サールがこの目的のために使っている基本概念をいくつか解説しておくのが役立つだろう.

---- ここまで訳文 ----




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