章立てはこんな具合:
- 序文(ポール・クルーグマン)
- 導入
- 第1章 イギリスの緊縮のマクロ経済学
- 第2章 ユーロ圏
- 第3章 緊縮の帰結
- 第4章 2015年イギリス総選挙
- 第5章 労働党の転換
- 第6章 EU離脱
- 第7章 メディア,経済学,ドナルド・トランプ当選
- 第8章 経済学者と政策立案
- 第9章 ネオリベラリズムから金権政治へ
- 結語
就業者の2割を占めるパート・バイトの賃金上昇は、働く人々の生活水準向上や消費底上げなどプラスの側面が大きい。一方、企業や事業者は必要な人材を確保するためのコスト増を迫られる。自動化などを通じ生産性を高めなければ1000円を超す時給が常態化する時代を生き残れない。吉野家ホールディングスは18年3~8月期連結決算で最終損益が8億5000万円の赤字(前年同期は13億円弱の黒字)になった。売上高は過去最高水準だったが、人件費が想定以上に膨らんだ。「未曽有の人手不足」(河村泰貴社長)への対策として、配膳などをセルフ式にして効率を高める新型店舗を来期から年100店ずつ増やしていく計画だ。ファミリーマートは全国の従業員を対象に家電を割引販売して人材を確保する一方、業務の効率化を進める。商品の検品作業を廃止したほか商品を並べやすい陳列棚を導入。省力化で1店舗1日あたりの作業時間を最大3.5時間減らす効果を見込む。効率化へ向け、19年2月期の既存店の投資額を600億円超に倍増する。イオンもセルフレジの導入など自動化投資を拡大する。
「日本人は(…)西洋の科学技術の設計をあらためて,自分たちの低賃金経済でコスト効率のよいものに仕立てた.製糸業に携わっていた商家の小野一族は,築地に製紙工場を建設する(…)使用したのはヨーロッパ製品に案を得た機械だったが(…)そうした機械は金属製ではなく木製で,動力は蒸気機関ではなくクランクを回す人力だった.このように西洋の科学技術を仕立て直すのは,「諏訪式繰糸機」にも見られるように日本で一般的に行われた(…).こちらは,ブラッドフォード・デロング「明治維新:《ユートピアへの蝸牛の歩み:長い20世紀の経済史》抜粋」から引用.
今週,トランプ政権は予算案概要を出した――もっと正確に言えば,「予算案」概要だ.本物の予算案なら,お金がどこから入ってきてどこに出て行くか詳しく述べるものだ.今回の発表で取り上げているのは,連邦政府の歳出の3分1ていどでしかないし,歳入や赤字の予測についてはなんにも言っていない.
財政の専門家 Stan Collender が言うように,「これは予算案ではない.トランプの政治キャンペーン広報資料が政府文書の仮面をかぶっているだけだ」
it’s surely relevant that the two big advanced economies — the US and the eurozone — both have fiscal policy paralyzed by political gridlock, leaving the central banks as the only game in town.
(…)アメリカとユーロ圏では,政治的な立ち往生〔グリッドロック〕によって,財政政策が痲痺してしまい,動きがとれるのは中央銀行だけになってしまっている.
In the U.S., it’s House Republicans who block spending on anything except weapons; they won’t even allocate funds for Zika! In Europe, nothing fiscal can happen without action by Germany, which is both self-satisfied with its situation and living in its own intellectual universe.他方,日本はちょっと政治経済的な状況がちがうと考えているらしい:
アメリカでは,武器以外にはどんな支出も許そうとしない議会の共和党がいる.連中ときたら,ジカ熱対策にお金を回すことすら拒んでいる.欧州では,ドイツが行動をとらないかぎり財政はうごきっこない.そのドイツは,自国の状況に自足していて,しかも,じぶんの知的宇宙にとじこもっている.
Japan is, I think, an interesting case, because whatever else it may suffer from, it hasn’t faced US or EZ-type gridlock. It’s not as clean a case as I would like — Abe allowed himself to be talked by the Serious People into fiscal tightening early on, putting the whole burden on Kuroda. But if you look at the longer-term story since the 1990s, Japan actually has had a combination of deficit spending and relatively cautious monetary policy — more or less what Weldon thinks the political economy should be causing everywhere.
日本は,興味をひく事例だと思う.というのも,いま日本がなにに苦しめられているにせよ,アメリカ型やユーロ圏型の立ち往生にははまっていないからだ.ぼくがのぞむほどすっきりした状況にはない――安倍は「お真面目な連中」〔財政緊縮派〕に言い込められて序盤から財政緊縮を許し,重責はまるごと黒田にのしかかった.ただ,もっと長期的に1990年代以降の事情をみると,日本は実のところ赤字支出と相対的に慎重な金融政策の組み合わせをとってきた――いまあちこちで政治経済状況が引き起こしているウェルドンが考えているのとだいたい同じ組み合わせをとっていたわけだ.
The problem now is that while advocates of more fiscal push seem to be winning the intellectual battle, the institutional arrangements that produce macro gridlock are likely to persist. It would take a yuuuge Democratic wave to break the gridlock here, and I have no idea what will unlock Europe.
いまの問題はこういうことだ――知的には積極的な財政政策を支持する論が勝利を収めつつあるように思えるが,マクロの立ち往生をつくりだしている制度的な環境はまだまだ長く続きそうに思える.ここアメリカでの〔政治的〕行き詰まりを打ち破るには民主党のすんげえ大勝利が必要だろう.欧州ではどうすれば行き詰まりが打破されるのか,ぼくにはさっぱりわからない.