2018年10月22日月曜日

経済発展と男女格差の縮小とともに男女の追求する優先事項のちがいは大きくなる:Falk & Johannes (2018)

男女の性差に関するおもしろい論文が出てる (via @eguchi2017):
【性差を評価する】
リスクをいとわないこと,忍耐,利他行動,損得それぞれの互酬行動,信頼といった事柄の優先順位には性別に関連した相違がある.これに寄与する要因はなんだろうか? Falk & Herme は76ヶ国8万人の個人を対象とした「全世界優先度調査」(Global Preference Survey) を実施し,GDP や男女格差指数といった国レベルの変数と調査データとを比較した.同研究によれば,女性の機会格差が平等に近づくほど,優先する事柄が男性と異なってくることが観察される.
この研究では,2つの対立する仮説をデータで検証している.

1つは,「社会的役割仮説」(social role hypothesis) で,これによれば,より男女平等が進んだ社会で男女それぞれに特有の社会的役割が弱まり,男女での優先事項のちがいは小さくなるかもしれないと予測される.つまり,経済発展と男女平等の進展は男女の優先事項の相違とマイナスの相関を示すと予想される.

もう1つの仮説は「資源仮説」(resource hypothesis) で,これによれば,物質的・社会的な資源がよりいっそう利用しやすくなるにつれて,性別に関わりなく生存に必要なことをやる必要は薄れて,男女それぞれに特有な目標を追求しやすくなると予測される.さらに,そうした資源を利用しやすくなると男女それぞれに独立にみずからの優先事項を実現しやすくなる.その結果,経済発展と男女平等の進展は,男女の優先事項の相違とプラスの相関を示すと予想される.

この研究の大規模調査が支持しているのは後者の資源仮説だ.経済発展と男女格差の縮小とともに,男性・女性それぞれが追求する優先事項のちがいは大きくなってくるのだという.



くわしくはリンク先の要約・本文を参照.

「経済学101」に訳した下記の記事も,似た論点を述べている:



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