2016年11月5日土曜日

ミラー先生の『消費』のサンプル訳をつくってみよう (8)

つづき:
とくに,大半のマーケターたちはいまだに人間本性について単純すぎるモデルを使っていて,過去20年のあいだに蓄積されてきた研究の知見を取り入れずにいる――進化人類学者,進化生物学者,進化心理学者たちによる研究が活かされていないのだ.「プレミアム製品は富や地位や趣味のよさを誇示するために買われる」といまだにマーケターたちは信じていて,見せびらかすようにヒトが配線されているもっと根深い心的性質を見過ごしている――ヒトは,やさしさや知性や創造性といった性質を見せびらかすように配線されているのに,そこを見過ごしている.彼らは消費を進化の文脈において考えようとしないし,先史時代の起源にまで遡ろうともしないし,その適応的な機能を理解していない.その結果,マーケターたちはヒトの心を見渡すすぐれた地図も,ヒトの心が棲まうこの記号に満ちたすばらしき新世界の地図も利用できていない.彼らに必要なのは,ダーウィンだ. 
そのダーウィンはと言えば,フィールドワークを一段落して,モールにおもむく必要がある.人間本性を探るダーウィン主義科学は,更新世の進化から,21世紀の消費者行動にいくらか注意を振り向ける必要がある.じぶんの生物学的な適応度を――生き延びて繁殖する見込みを――でっちあげて人々が互いに見せびらかしあう方法をもっと深いところで理解する必要がある.適応度の具体的な側面を理解する必要がある――じぶんたちの「適応度表示器」(fitness indicators) をとおして見せびらかしている最重要の身体的・心理的な性質を理解しなくてはいけない.そして,人々が買い求める製品の大半は,まさにこの適応度表示器だ.

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