2016年5月28日土曜日

「ジェンダーと科学の科学:ピンカーとスペルクの対論」(11)

ピンカーとスペルクの議論をちまちまと訳しています.いまはピンカーによるプレゼンの途中.(前回分はこちら)

以下,訳文:

第六,遺伝的には男の子だけれども女の子として育てられた事例.有名な1970年代の「ジョン/ジョアン症例」では,一卵性双生児の男の子の一方が割礼の不手際でペニスを失いました(不手際というのが〔ペニスの皮を切って出血を口で吸うときの?〕口 (moyl) によるものではなく下手な外科手術によるものであると聞いたときはホッとしたものです).当時のジェンダーに関する専門家の助言にしたがって,両親はこの男の子を去勢して女性ホルモンを投与し,女の子として育てることに同意しました.このことは少年時代の当人にはすべて伏せられていました.

ぼくが大学院生だったときには,ジェンダーがいかに社会的に習得されるかという証明としてこの症例を教わりました.しかし,実は事実が隠されていたんです.「ジョアン」と彼女の家族が何年もあとにインタビューを受けたときにこんなことが判明しました――ごく幼い頃から,彼は攻撃や乱暴なあそびといった男の子に典型的な行動パターンを見せ,女の子に典型的な活動は拒否し,ヒトよりもモノに強い関心を見せていた.14歳のとき,鬱で苦しんだ父親はとうとう彼に真実を伝えます.彼はさらなる外科手術を受け,女性と結婚し,2人の子供を養子に迎え,食肉処理場で職を得ました.

これは,ただこれっきりの独自な事例ではありません.総排泄腔外反症 (cloacal exstrophy) という症状があり,遺伝的な男の子が通常の男性器をもたずに生まれます.こうした男の子が去勢されて女の子として育てられると,記録にある25の事例のうち25例すべてで,じぶんがまるで女の子の体にとらわれた男の子のように感じ,乱暴なあそびのような男性に特有の行動パターンを見せています.

――今回はここまで.

続きます

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