2016年5月23日月曜日

「ジェンダーと科学の科学:ピンカーとスペルクの対論」(09)

ピンカーとスペルクの議論をちまちまと訳しています.いまはピンカーによるプレゼンの途中.(前回分はこちら

以下,訳文:

第一に,性差が生じうる生物学的仕組みはたくさんあります.
男性と女性には性ホルモンの水準に大きなちがいがあります.とくに,胎児期の6ヶ月と思春期に顕著です.大脳皮質も含めて脳のあちらこちらにホルモン受容体があります.男性と女性の脳には小さなちがいがいくつもあります.たとえば,脳全体の大きさがそうです(体の大きさのちがいを調整してもちがうのです).また,皮質ニューロンの密度や,大脳の非対称度合い,hypothalamic nuclei の大きさをはじめ,他にいくつかちがいがあります.

第二に,主要な性差の多くは普遍的です.「多く」と言いましたが,もしかすると全部かもしれません.どこかに私たちの文化とはなにもかもが逆になっている文化があるという考え方は,いまや学問上の伝説だとわかっています.
人類学者のドナルド・ブラウンは人類学的な研究文献を調査して『ヒューマン・ユニバーサルズ』という著書にまとめています.彼の指摘によると,すべての文化で男性と女性は異なる性質 [natures] をもっているとみられており,子供の養育に直接関わる度合いは女性の方が大きく,さまざまな尺度でみて競争心は女性より男性の方が強く,また,女性にくらべて男性の方が空間移動の範囲が広いのです.
性格 [personality] はどうかと言いますと,Feingold によるメタ分析に国をまたいだ調査があります(真に文化をまたいだ調査ではないまでも).これによると,性格の性差はさまざまな年齢,データ収集の年,教育水準,国をまたいで一貫しています.空間的な操作や数学的推論について言うと,関連データはこれより少なくなり,正直に言って,真に文化をまたいだ調査はありません.しかし,国をまたいだ調査ならあります.David Geary と Catherin Desoto は,ヨーロッパ10ヶ国とガーナ・トルコ・中国において,予想どおりの性差を見いだしています.同様に,ダイアン・ハルパーン [Diane Halpern] は,10ヶ国の調査結果を分析してこう述べています――「こうした発見の大多数からは,認知テストで男女を比較したときに驚くほど文化をまたいだ一貫性があることがわかる」 


――今日はこれだけ.

つづきます

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