2016年5月22日日曜日

「ジェンダーと科学の科学:ピンカーとスペルクの対論」(08)

ピンカーとスペルクの議論をちまちまと訳しています.いまはピンカーによるプレゼンの途中.(前回分はこちら



ピンカー:最後に,分散にも性差があります.ここで大事なのは,正しい標本に目を向けることです.分散の推定は,分布のテール部分によって大きく左右されます.そして,定義により,テール部分にいる人の数は他より少なくなります.多くの調査において分布のテール部分にいる人々はさまざまな理由から除外されやすく,そのため,全国の人口から大量の代表的な標本をえることが肝心です.この点の基準を満たしている最高のお手本は,ノヴェルとヘッジによる Science 誌掲載論文です.この論文では,大きな層化抽出標本6つを報告しています.彼らの発見によれば,37件のテストのうち数学・空間・科学のテストを含む35件で男性の分散は女性の分散を上回っています.

基準を満たしているデータは他にもあります.このグラフに示したのがそれで,スコットランドの全人口が示してあります.
彼ら全員が同じ年に知能テストを受けました.X軸は平均値 100 の IQ を表し,Y軸は男女の比率を表します.ご覧のとおり,きわめて整然としたデータです.範囲の中央では女性が優勢なのに対して,両極にいくと男性の方がやや多数になっています〔原文では "at both extremes, males slightly predominate" とある〕.言うまでもなく,両端には相当割合の女性がいます――しかし,大きな性差もあります.

以上みてきた6点の性差が存在するからといって,これらが生得的だということにはなりません.もちろん,生得性の問題の方がずっと解決困難です.その議論のために必要な予備知識は,「生まれ」と「育ち」はあれかこれかの選択ではないということです.所与の性差の説明に両方が関わっていることもありえます.そこで唯一の問題は,生物としての仕様 [biology] が寄与する分がゼロを上回っているかどうか,です.生物としての仕様の寄与分がゼロを上回る証拠は10種類あります.とはいえ,もちろん,どれをとっても,100パーセントからはかけはなれています.


――今日はここまで.

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