以下,訳文:
第七,親や教師による扱いにちがいがない場合.ここで紹介する結論は,多くの人にとって驚きのようです.そうした結論の1つは,Lytton and Romney によるメタ分析から導かれています.このメタ分析では,172件の研究と2万8千人の子供が関わる性別に特有な社会化を扱っており,親たちによる報告と,親たちが実際に息子・娘たちをどう扱っているかを直接に観察したものを検討しています――そして見いだされたのは,現代アメリカ人のあいだではほとんどちがいがないか,あったとしてもわずかなものだということです.とくに,「ものごとの達成をはげます」と「数学での達成をはげます」の範疇にちがいはみられませんでした.
広く信じられているこんな神話があります――いはく,教師たちは(ごぞんじのとおり圧倒的に女性が多いわけですが)クラスで女の子を当てて発言させずにおくことで性別格差を継続させているまぬけか,あるいは当てて発言させるにしても女の子の成績に低い期待しか抱いていないろくでなしだ,という神話です.実際には,100名の教師と1800名の生徒を研究した Jussim and Eccles の結論によれば,教師たちは生徒がみせた実際の成績と同期にもとづいて生徒をとらえているように思われるとのことです.
第八,胎児期の性ホルモン:これが,そもそも男の子を男の子たらしめ,女の子を女の子たらしめる仕組みです.ところどころ脆弱なところもあるものの,これに関する証拠はあります.これによると,胎児期のホルモンが異なることで同じ性別でものちに思考や行動にちがいが生じるとのことです.先天性副腎皮質過形成症 (congenital adrenal hyperplasia; CAH) という症状では,子宮内の女の子が通常より多いアンドロゲンにさらされ,出生後にこれが中立化します.しかし,この女の子たちが成長していくと,他の女の子たちに比べて男性に典型的なおもちゃの好みを見せます――つまり,トラックや鉄砲といったおもちゃを好むのです.また,男性に典型的なあそびのパターンを示し,より強い競争心を見せ,あまり協調性を見せず,男性に典型的な職業選択の好みを示します.しかし,彼女たちの空間能力に関する研究は決定的な結論がでていません.ぼくとしては,「CAH の女性が男性に典型的な空間認知のパターンを見せる再現可能な実験結果がありますよ」とは誠実に言えません.
同様に,胎児期のテストステロンのちがいもこれまでにさまざまな研究がなされており,胎児期のテストステロンは次の点と非単調な関係[*] があることがわかっています――生後12ヶ月におけるアイコンタクトと顔知覚の低下,生後18ヶ月における〔通常にくらべた〕語彙の減少,生後48ヶ月における対人スキルの低下と関心の大幅な狭さ,そして学齢期における心的回転能力の強化.
*原文では "... has a nonmonotic relationship" とあるが,nonmonotonic のタイポと判断した.
――今回はここまで.
続きます.
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