2018年11月8日木曜日

"biology" は「生物学」とはかぎらない

下記の文を考えてみよう:
"human behavior is the product both of human biology and human culture"
(Donald Brown, Human Universals)

これをついついこんな風に訳したくなるかもしれない:
「人間の行動は,人間の生物学と人間文化の両方の産物だ」
でも,ちょっと考えるとおかしい――「生物学」という学術分野が,人間行動を生み出すの?

てきとうな辞書を引けば,「生物学」とは別に「生体の仕組み」くらいの語義が解説されているのがわかる.たとえば,オックスフォード学習者向け英語辞典には,この2つがでてくる:
 the scientific study of the life and structure of plants and animals(植物や動物の生態や構造の科学的研究;「生物学」)
the way in which the body and cells of a living thing behave(生き物の身体や細胞のふるまい方;「生き物の仕組み」)
というわけで,さっきの英文は,こんな風に訳す方がマシだ:
「人間の行動は,人間の生体の仕組みと人間文化の両方の産物だ」
学問分野と(その分野で研究する)仕組みの多義性は他の単語でも見られる.たとえば economics がそうだ.

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