ちょっと気になったことをメモっておく.
ポイント
- 「キーボードショートカットの方がマウス操作よりも速いように感じられるけれど,実はその逆である」という話がある.ソースはブルース・トグナッツィーニが1989年に公表したQ&A形式の文章だ.
- ただ,トグナッツィーニが具体的に被験者にどんなタスクをやらせたのか,彼の文章からはよくわからない.(おそらくは,たとえばテキストエディタにある「ファイル」「編集」などのようなメニューから機能をマウスで選択したり,それに割り当てられたショートカットキー操作をする,といったタスクだったのだろう.)
メモ本文
清水亮「ショートカットキーはマウスより遅い」(WirelessWire News, 2015年3月22日)に,次のような話がでてくる:
CTRL+Xでカット、CTRL+Vでペースト。
ショートカットキーの使い方を覚えると、パソコンの達人になったような気分になりますよね。
しかし、実際にはショートカットキーを使用すると、マウスでメニューから「編集」「ペースト」を選ぶよりも平均2秒も遅いのです。
「そんなバカな」
と思いますよね。
しかし、これはTogことブルース・トグナッツィーニがAppleでMacintoshの開発を担当した際に行った膨大な実験の結果、解ったことなのだそうです。
〔中略〕Togの主張によれば、我々ユーザはショートカットキーを選ぶのに2秒かかっているものの、ショートカットにたどり着くまでの時間を喪失している、つまりプチ記憶喪失状態になっているというのです。だが,これだけではどうもよくわからない.
同記事は,Tog のエッセイ "Keyboard vs. The Mouse, pt 1" にリンクを貼るだけでなく,この Tog の話が増井俊之『スマホに満足してますか?』(光文社新書,2015年)で紹介されているとも述べている.当該の箇所は,第1章10節「時間感覚のコントロール」だ.そこでも,だいたい同じようなことが書かれている(ちなみに,カット & ペーストに言及はない).
Tog のエッセイを見ると,次のように書かれている(原文と照らし合わせたい方は,"We’ve done a cool $50 million of R & D..." 以下を参照):
ぼくらはアップル・ヒューマン・インターフェイスで5000万ドルのクールな研究開発をやった.それで発見したのは,なにより次の一貫した事実だった:
- 被験者は一貫してキーボード操作の方がマウス操作よりも速いと報告する.
ユーザー経験と現実の矛盾は,多くのユーザー/開発者の「キーボード操作の方が速い」という信念の土台になっている.
- ストップウォッチで計ると,マウス操作の方がキーボード操作よりも速い.
マウスになじみのない人たちは,なにかタイピング以外のことをやろうと思うたびにこれを習得するプロセスを信じられないほど時間の浪費だと感じる.そこに,マウスの利点がある:2秒かけてこれを探す〔=おそらくメニューから求めるコマンドを探すこと〕のに高次の認知的関与は必要ないので,退屈なんだ.
どの特殊機能キーを押せばいいのか判断するのには2秒かかる.抽象的な記号がいくつかあるなかからこれだと判断するのは高次の認知機能だ.この判断は退屈じゃないばかりか,ユーザーは健忘を経験するほどだ.ほんものの健忘だよ! この判断に費やされた時間は,たんに存在をやめてしまう.
この場合に,キーボード・ユーザーはあたかもマウス・ユーザーに対して2秒かせいだかのように感じるけれど,実はその反対が正しい.キーボード・ユーザーは興味をそそるプロセスに身を入れていたために健忘を経験しているのに対して,マウス・ユーザーは身を入れずにやっているために成し遂げようとしているタスクについて考え続けられたのだ.じぶんのタスクを脇に置いて抽象的な記号について考えたり思い出したりしなくてすんだわけだ.
このため,主観的にはそう経験されないにも関わらず,ユーザーはマウスによって有意な生産性向上を達成することとなる.こちらでも,どういう研究をやったのかくわしいことはわからない.ただ,言わんとしているポイントはとてもおもしろい.
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