2018年9月24日月曜日

おしえてフォコニエ & ターナーせんせいズ #1

もうだいぶ古い本だけれど,フォコニエ & ターナーの The Way We Think (Basic Books, 2002, pp.39-40) [Amazon] から,メンタルスペースと概念融合について解説した箇所をちょっぴり抜粋してみるYO.

【概念融合の要素たち】
《仏教僧が夜明けに徒歩で山に登り始める.日が沈む頃に山頂にたどり着き,数日間そこで瞑想して,また徒歩で麓へと歩き出し,日が沈む頃にたどり着く.この仏教僧が旅の最中にどれくらい休みをいれたか,どれくらいの速さで歩いたかについて,まったく想定を立てずに考えて欲しい.謎:行き帰りの2つの行程で,この仏教僧が同じ時刻にいた地点はあるだろうか?》
これは,アーサー・ケストラーの『創造の技法』に出てくるすばらしい謎なぞだ.この仏教僧のおはなしについてこのあと語ることをいっそう効果的にするには,いまここで本書を閉じてもらって,いっさいヒントなしで謎なぞを解こうとしてもらうのがいい.
さて,また本を開いて,ここにもどってこれたかな.それでは,これを試してみよう:ある日に仏教僧が登山を始めて,後日になって下山を始めるのを思い描くかわりに,同じ日に往路と復路の両方を始めるのを想像してみよう.すると,必ずどこかの地点で仏教僧はもうひとりの自分に出くわす.その地点こそが,ぼくらが探し求めていた地点だ.この地点があるとわかれば謎解きはおわる.その地点が具体的にどこなのかはわからないけれど,とにかく往路と復路で同じ時刻にその地点に仏教僧がやってくるのはわかる.多くの人にとって,これは謎をとく説得力ある解法だ.
でも,このささやかな謎ときを終えても,いっそう大きな科学上の謎なぞが出現してしまう:みんなはどうやってこの解決法にたどりつくのだろう? そして,それが正しいと納得してしまうのはどうしてだろう? 同じ仏教僧が同時に往路と復路を歩くなんて不可能だ.「もうひとりの自分にでくわす」なんてありえない.それでも,このありえないものを想像で創り出すことで,探し求めていた真実が手に入る.それが可能かどうかなんて,ぼくらはてんで気にしない――ぼくらの推論にとって,関連がない.かたや,*2人* の旅人が出くわすシナリオなら,可能であるばかりかよくある話だ.もともとの謎なぞにはそんなシナリオはなくって,たんに同じ人物が別々の日に別々のことをしているとしか言っていないけれど,このシナリオを使うのは解決法を理解するために決定的に重要だ.
仏教僧がもうひとりの自分にでくわすのを想像する概念化では,山頂にむかう往路と麓にもどる復路を融合させていて,ここには「でくわす」という創発的な構造が含まれている.この部分は,往路・復路べつべつの旅路にはなかった.この創発的な構造のおかげで,答えが明らかになっている.
つづく

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