2018年9月24日月曜日

おしえてフォコニエ & ターナーせんせいズ #2

前回のつづき.


メンタルスペース
メンタルスペースとは,みんなが考えたりおしゃべりしたりしてるときに構築されていく小さな概念パケットで,局所的な理解と行動に用いられる.仏教僧なぞなぞのネットワークでは,山にのぼる往路に1つのメンタルスペースがあてられ,山をくだる復路にまた別のメンタルスペースがあてられる.メンタルスペースは,「フレーム」という長期的な図式的知識でつなげられる.一例は《道を歩く》フレームだ.また,メンタルスペースは長期的な具体的知識にもつなげられる.たとえば,2001年にレーニア山に登ったじぶんの記憶につなげられたりする.自分,レーニア山,2001年,レーニア山に自分が登るという要素を含むメンタルスペースはいろんなかたちでいろんな用途のために活性化される.たとえば,「きみって2001年にレーニア山に登ったんだよね」と言われれば,過去の出来事を報告するためにこのメンタルスペースが構築される.「もしも2001年にレーニア山に登っていたとしたら」だと,反事実的な状況とその帰結をじっくり考えるために同じメンタルスペースが構築される.「きみが2001年にレーニア山に登ったってマックスは思ってるよ」でも同じメンタルスペースが構築されるけれど,今度の用途はマックスが信じていることを規定するためだ.「この絵はきみが2001年にレーニア山にのぼってる情景だよ」だったら,またしても同じメンタルスペースが,絵の内容についておしゃべりするために喚起される.「この小説では,きみが2001年にレーニア山にのぼるんだよ」だと,もしかすると虚構かもしれない情景を著者が小説に挿れていると報告している.メンタルスペースはごく部分的だ.メンタルスペースにはあれこれの要素が含まれていて,典型的にはフレームによって構造を与えられている.メンタルスペースどうしもつながっているし,思考やおしゃべりが進展するのにつれて修正・加工されていくこともある.メンタルスペースは,思考と言語における動的な写像をモデル化するのに一般的に用いられうる.
これからいろんな機会に図を使ってメンタルスペースや概念融合について語っていく.そうした図では,メンタルスペースを円で表す.〔スペース内の〕要素は円のなかの点(やアイコン)で表す.いろんなメンタルスペース内の要素どうしのつながりは実線で表す.こうした認知プロセスを神経の観点で解釈するなら,メンタルスペースとは活性化した神経組織の集合であり,要素どうしをつなぐ線は特定の種類の同時活性による結びつけ (coactivation-bindings) だ.さらに,そのメンタルスペースに利用されているフレーム構造は円の外を囲む長方形か円内部のアイコンで表す.
入力スペース.「仏教僧」ネットワークでは,入力スペースが2つある.図 3.1 を見てもらうと,それぞれ,往路と復路に対応する部分構造となっている.往路の日を d_1,復路の日を d_2 で示し,往路を上っている仏教僧を a_1,復路を下っている仏教僧を a_2 で示してある.

スペース間写像 (Cross-Space Mapping).スペース間をまたぐ部分的な写像〔対応づけ〕は,2つの入力スペースで対応する要素どうしをつなぐ(図 3.2 参照).スペース間写像により,片方のスペースにある山・移動している個体〔仏教僧〕・旅の日が,もう一方のスペースにある山・移動している個体・旅の日に結びつけられている.

総称スペース (Generic Space).総称的なメンタルスペースは,入力の各要素へ写像し,複数の入力に共通しているものを含む:〔仏教僧の例では〕移動する個体,その位置,山の麓と山頂をつなぐ経路,旅の日,〔登りか下りか〕特定されていない方向への移動がここに含まれる(図 3.3 では両方を向いた矢印でこの移動方向を示してある).

融合 (Blend).さらに4つめのメンタルスペースがある.それが融合スペース (blended space) だ.この先は,たんに「融合」とだけ呼ぶことも多い(図 3.4).2つの入力スペースそれぞれにある山の斜面は,融合スペース内にある同じ1つの斜面に投射される.2日ある旅の日 d_1 と d_2 は,同じ1日の d' に写像され,こうして融合する.でも,〔入力スペースに2揃いある〕移動する固体とその位置は,この日の時刻にあわせて別々に写像され,移動方向もそれぞれ〔登り・下りのまま〕保持される.こうして,両者は融合する.入力スペース1 は,登りの旅全体を動的に〔=時間をおって〕表示し,他方,入力スペース2 は下りの旅全体を表示する.融合スペースへの投射では時間と位置はそのまま保持される.時間 t と日付 d' をもつ融合スペースには,a_1 に対応する要素,a_1 がいる位置,日付 d_1 の時点 t が含まれるのに加えて,a_2 に対応する要素,a_2 がいる位置,日付 d_2 の時点 t も含まれる.

著者たちが言う神経学的な解釈は根拠レスっぽいので,ぼくは真に受けないようにしてる.

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