2018年9月28日金曜日

「きっと」の easily

「かんたんに」という意味でおなじみの easily には,「きっと」「ぜったい」「もちろん」くらいの意味もある(「様相」を表す副詞でもあるわけだ).とはいえ,あまりノンフィクション本や記事・論文のたぐいではお目にかからないような気がする.動画を見ていたら「お,でてきたな」と気がついたので,メモ.

論証のルール #2: 自然な順序でアイディアを展開しよう

またウェストンせんせいの『論証のルール』(第5版)から:

2018年9月25日火曜日

用例採取: 「ユージン・スレッジが踊りたがるまで踊らないんだ」

これも "The Pacific" 10話から,これも固有名詞の面白い使い方(開始4030秒分あたり;訳は字幕をそのまま借用):
"If Mary catches us, She'll have me back inside dancing all night."(メアリー〔=新婚の妻〕に見つかればひと晩中ダンスだ)
"You see that? That's why I'm still a bachelor. I don't dance until Eugene sledge wants to dance."(だから僕は独身なんだ.踊りたい時にしか踊らない)
太字強調した箇所は,省略せずに訳せば「ユージン・スレッジが踊りたがるまでぼくは踊らないんだ」くらいになる.これのなにが面白いかというと,言ってる本人がユージン・スレッジだというところ.固有名詞をこんな風に使うと,話し手じしんを客観視するような視点が喚起されるようだ.

用例採取: The Mary Houston

HBO のドラマシリーズ "The Pacific" の10話を見てたら,久しぶりに定冠詞+固有名詞のパターンを耳にした(開始29分あたり;訳は字幕をそのまま引用):
"What do you remember about Mary Houston?"(メアリー・ヒューストンは?)
"Mary Houston?"(ヒューストン?)
"Yeah."
"The Mary Houston? Well, like everybody else in mobile, I was in love with Mary Houston."(あのメアリーか? みんなと同じで憧れてた)
"That's too bad for you. She's marrying me."(残念だな.俺と結婚する)
ちなみに Amazonさまのプライム会員なら "The Pacific" は Prime Video でタダで見られるYO.

2018年9月19日水曜日

S.ピンカーとH.バーバの議論(追記:ピンカーのみ抄訳)

スティーブン・ピンカーと,「ポストコロニアル理論」のホミ・バーバのあいだで書面で交わされた議論(9月22~23日に2人が参加するイベントがなんかあるらしい):
ピンカーの最初の返答では,進歩・発展に対して向けられがちな批判の問題点を例によって平易な文章で述べている.ちょっと訳してみよう:

藤津亮太氏インタビューが面白かった: 「配信はアニメのストーリーを変えるのか」

テック系ライターの小寺信良&西田宗千佳コンビがやってるメールマガジン『金曜ランチビュッフェ』に連載されたインタビュー記事「藤津亮太さんに聞く「配信はアニメのストーリーを変えるのか」」が面白かった.Amazon の kindle unlimited を利用していたら,無料で読める.

2018年9月18日火曜日

議論の「構図」でついついうっかり賛否を決め打ちしてしまう?

もしかしてそういう落とし穴があるかなと思った.あくまで「こういうケースもあるのかな」という当て推量でしかないよ.(強いて言えば,ぼく自身,身に覚えがあるといえばあるかな.)

「根本病」あるいは「根本原因論」

ピンカーせんせいの Enlightenment Now [Amazon] から抜粋:

メモ (Noah Smith vs. Paul Krugman)

クルーグマンがブログで経済学の現状について長文で述べている:

2018年9月17日月曜日

言い過ぎじゃない? だいじょうぶ?

與那覇潤「大学でいちばん大切なこと」(『B面の岩波新書』,2018年9月15日)という文章がTwitterのタイムラインで流れてきて,うっかり読んでしまった.

2018年9月14日金曜日

「定義論争意味ねえ」論

捜し物の1つをたまたま某先生がTwitterで訳書の方を抜粋してたので,原書で確認したYO:

2018年9月13日木曜日

定義のルール #2:「用語の意味が争点になったときは明瞭な事例から手をつけよう」

ウェストンせんせいの「定義」解説の続き(こちらも参照: #1 & #3; これで定義の箇所はぜんぶ訳しちった).
D2: 用語の意味が争点になったときは明瞭な事例から手をつけよう
たまに,用語の意味が争点になる場合もある.つまり,用語そのものの適切な適用をめぐってああだこうだと議論になる場合がある.そういうときには,たんに用語の意味をはっきりさせる案を出すだけでは足りない.もっと込み入った論証が必要になる.

「言語と基本的な想定を共有している者どうしにしか議論は成立しない」?

ちょっと調べ物をしていて,目当てのものは見つからなかったけど,別の箇所をなんとなく抜粋(拙訳):

2018年9月12日水曜日

定義のルール #1: 「用語の意味がはっきりしないときは,意味をつきとめよう」

昨日抜粋した「定義は論証の代わりにはならない」のついでに,ウェストン『論証のルールブック』から定義を解説してる他の箇所も少し訳してみよう:

定義のルール#3:「定義は論証の代わりにはならない」

アンソニー・ウェストンせんせいの『論証のルールブック』の付論では,定義の取り扱いを解説している.ちょっとだけ抜粋してみよう:

2018年9月11日火曜日

それにつけてもSurface Goのほしさよ

日本ではストレージ SSD 128GB モデルのお値段89,424円(税込)という価格設定.「じゃんぱら」をチェックしてみたら未使用品76,800円(9月10日現在)の他にも中古美品が少しだけど流れ始めてるみたい.まだだ…まだ買えんよ.

切ない思いで各所のレビューを眺めただけの8月だった.
そうこうするうちに,10月の Microsoft イベントで Surface Pro の新型が発表されそうな予感.

ツイート記録

近年めずらしく長めのツイートをしたので,このチラシの裏に記録.

一連のツイートの起点(残りはこれにぶらさがってる):
うっかりツイートの連鎖を途中で切ってしまった.以下のツイートからもうちょい続けている:
さらに続きの起点:

2018年9月6日木曜日

自然な日本語に訳す練習問題: the thought

Twitterでなんとなく書いたネタ.
例文は,ニュースサイト Vox の動画から拝借した.


どんな場面で出てきた文なのか見ておくと,言わんとしてることがわかりやすくなるはずだ.

続きを読む前に,自分なりに1つ訳例をつくってもらえるとうれしい.

(できました? では続きをどうぞ)

2018年9月3日月曜日

「さもなくば」の 'OR': 言外に補われる分岐がおもしろい

みなさんご存じのとおり,「~した方がいいぞ,そうしないとこうなるぞ」と伝えるときに,こういう風に OR を使える:

  • "We need some agreement about facts or the situation is hopeless." 「事実についてなんらかの合意が必要だ,さもないと状況は絶望的になる」 (Tim Harford)
  • "She had to have the operation, or she would die."「彼女は手術を受けるしかなかった,そうしないと死んでしまうのだ」 (Collins COBUILD)
  • "Turn the heat down or it'll burn." 「温度を下げろ,さもなくと燃えてしまうぞ」(Oxford Learner's Dictionary

(下線・太字は引用者によるもの)

この用法が面白いのは,下線を引いた箇所が表す状況が実現されなかった場合の帰結を OR 以下で示すところだ.これは,ふつうの OR とずいぶんちがう.たとえば2つ目の例文をもしも単純な選言「PあるいはQ」で解釈したなら,「彼女には手術を受けねばならなかったか,あるいは,彼女は死んでしまっただろう」という意味になる(余談ながらここで "she would have died" と仮定法過去完了にしていないところが興味深い:この言い方ができるのは,彼女が死ななかったのを知っている視点だ)――でも,もちろんここではそんなことを言おうとしてるわけじゃない.

「さもなくば」の意味で解釈すると,「彼女は手術を受けねばならなかった」のをふまえたうえで,実際に手術を受けるケースと受けないケースが暗黙に対比され,さらに,それぞれの帰結も対比される:「手術を受けなければ死んでしまう」(含意:手術を受ければ死なない).下のらくがき図解をみてほしい:



この場合,どちらか片方だけが成り立つ排他的関係になっているものが2ペアある.1つ目の排他的なペアは「手術を受けるか,受けないか」だ.そして,それぞれの帰結が2つ目の排他的なペア「死なないか,死ぬか」をなす.「さもなくば」の例文で言葉で明示している事態は,図のなかで二重線で示してある.手術を受けねばならなかったという事態と,死んでしまうという事態の2つだ.あとは,この例文を理解する際に暗黙に補われている.