以下,訳文:
ピンカー:第一の相違点は,雇用・就業の慣行を研究している経済学者たちによって昔から指摘されてきました.男女で生活・人生の優先事項に挙げるものが異なる,というのがそれです.一言にまとめればこうなります:平均でみて,男性は家族を犠牲にしても地位をもとめるのに対して,女性はもっと均衡のとれた重みづけをします.繰り返しますよ:「統計で考えるべし!」 この発見のポイントは,女性が家族を重んじて地位を重んじないということではありません.男性が地位を重んじて家族を重んじないということもでありません.また,この発見からは,女性が平均的に示す非対称をどんな女性も一人残らず見せるとか,男性が平均的に見せる非対称をどんな男性も一人残らず見せる,という含意もでてきません.そうではなく,大規模なデータセットにおいて,平均してみると,ああいう非対称が見つかるのです.
このデータセットから,さらにもうひとつ数字を引きましょう.みなさんの予想どおり,このサンプルにいるのは,猛烈に働くことを厭わない大勢の人たちです.このグループの人たちは,その多くが週に50時間,60時間,いや70時間だってよろこんで働くと答えています.ですが,ここにはわずかなちがいが見られます.グラフには長時間はたらく人たちを時間ごとにわけて示してありますが,〔50時間以上の〕どれをみても,女性より男性の方がわずかに多いのです.つまり,女性よりも男性の方が,仕事以外の人生を気にかけないというわけです.
2点目,人に関心を寄せるのか,それとも,モノや抽象的な規則体系に関心を寄せるのか.
この特徴については,腰が抜けるほどたくさんのデータがあります.というのも,人々の職業選択の関心をひたすら研究する分野があるからです.きっと,この会場においでのみなさんの大半は,これまでの人生のどこかで,職業適正テストを受けたことがあおりでしょう.さて,この研究分野が蓄積してきた証拠によれば,男性と女性では,理想とする職業として魅力を感じる活動の種類が一貫して異なっています.ここでは,そのうちひとつだけを論じましょう:人を相手に働きたいか,それとも,モノを相手に働きたいか,というちがいをとりあげます.この尺度では,女性と男性に大きな平均差があります.だいたい,1標準偏差のちがいです.〔※ここはぼくの理解があやしい: "There is an enormous average difference between women and men in this dimension, about one standard deviation."〕.
こうした興味関心のちがいがあるために,キャリア選択で少し違った進路に人々が向かっていくこととなりがちです.〔「人相手がいい」か「モノ相手がいい」かを見たときの〕モノサシで「人相手」側の端っこにいちばん適した職業は,「地域サービス団体の責任者」です.反対側にいって,「モノ相手」側の端っこにいちばん適した職業は,物理学者・化学者・数学者・コンピュータプログラマ・生物学者です.
この帰結が見られるのは科学に向かうかどうかの選択だけでなく,男女がそれぞれ科学のどの分野を選ぶかという点にも見られます.言うまでもなく,1970年から2002年までに,女性に与えられる学位の数はものすごく増えました.しかし,パーセンテージでみると,いまも分野間で劇的なちがいがあります.たとえば,2001年に与えられた Ph.D のうち,教育では博士号の 65% が女性に与えられています.社会科学では 54%,生命科学では 47%,物理化学では 26%,工学では 17% です.これは,人や生き物を相手にするのがいいかそれとも無生物のモノ相手がいいかという関心のちがいから完全に予想されるとおりです.そして,なるほど絶対数では変化があったものの,このパターンは1980年でも2001年でもだいたい同じです.
――今日はここまで.
続きます.
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