2013年6月4日火曜日

今日のクルーグマン:「爺さまたちは大丈夫」(要旨)

2013年6月3日付のコラム "The geezers are all alright"――アメリカの債務・財政赤字に関する報告書 (LINK) を議会予算局が公表したのを受けた内容となっている.以下,かんたんに要旨をみていこう(注意.翻訳ではありません):





[1] これまでさんざん「債務がやばい!緊縮しないと国がほろびますぞー!」という警告がなされてきたけれど,今回の予算局の報告書の予想では,財政赤字は減少するし,債務の対GDP比はこの先10年間にわたってだいたい安定するという数字になっている.

[2] 実にけっこうなことだけど,「財政破綻!財政破綻ですぞ!」と論じ立ててキャリアを築いてきた人たちにとっては,みたくなかった報告書だろう.

[3] 「でも,ベビーブーム世代が高齢化するからそのうちヤバいことになるんでしょー? いますぐなにか劇的な対策をしないと,社会保障制度やメディケアは破綻しちゃうんでしょ-?」――いや,そうでもなさそうよ.

[4] たしかに年金制度には手直しが必要ではある.65歳以上の高齢者が人口に占める割合はこの先10年で大幅に増える.それにともなって社会保障制度とメディケアへの支出が国民所得に占める割合も増加する.

[5] でも,「高齢化による社会保障破綻論」から想像されるほどには,ヤバくない.データからは,ごく穏当な調整さえすれば社会保障制度を現状のまま維持できるのがわかる.

[6] 社会保障ついて:たしかに年金制度の管財人は高齢化にともなう支出増を予測している [LINK].支出額のGDP比は現在の5.1%から2035年には6.2%に上がって,そこからは安定する.ってことは,社会保障制度が「破綻する」とかって話はナンセンスなのよ.なにもしなくたって,予定された支給の大半はちゃんと支払える.

[7] ただ,やがて不足が生じそうに見えるのはたしかで,札付きの評論家連中はすぐさま支給額を減らさなきゃいけないと言い張っている.でも,これは意味不明な言い分だ――将来のどこかで支給額を減らさなきゃいけなくなるとして,そのリスクを回避するために機先を制して支給額をいま減らしたとして,それでなにが解決するっての?

[8] メディケアについて:クルーグマン当人も含めて,多くの人が「社会保障制度よりメディケアの方が問題だ」と警告してきた.最新の報告書では,支出は現状3.6%から2035年の5.6%に増えると予想されている.これはかつての予想よりも小さい増え幅だ.なんでこうなった?

[9] 答え:健康管理コストは長らく上昇傾向だったのが,ここ数年ばかりで大幅に伸び方を低めたから.理由は不明だけどオバマケアが有効だったという証拠が見られる [LINK].他にもこれからコスト削減策が実行されるので,この好ましい傾向はさらに続きそう.

[10] さらに,節約にはげむ余地もたっぷりある.アメリカ人の医療関係費は他の先進国よりはるかにでかい [LINK].この価格プレミアムは下げられるし,下げるべきだ.そうすればメディケアの財政的な見通しはいっそう改善するはず.

[11] まとめると,社会保障制度とメディケアのコストは2035年までにちょっとばかし増える.この数字は健康管理コストを下げる努力でもっと小さくできる.GDP比3%がでかい数字だけど,経済を破滅させるような数字じゃない.たとえば,アメリカ政府は支給額を減らすことなく増税で〔※クルーグマンが「増税」というときは基本的に富裕層増税のこと〕この差を縮められる.増税したとしても,アメリカの税率はまだ先進国でも屈指の低さだ.

[12] でも,えらい人たちは「社会保障制度とメディケアは維持できない!全面的に改めなきゃダメだ!」って言ってたじゃないですかー.うん,言ってた.そして,てんで間違ってた.「すぐさま緊縮しないとギリシャみたいな財政危機に陥るかんな!」と言ってたけれど,その人たちは大間違いだった.そして,社会保障のもっと長期の話でも間違ってたわけ.

[13] 社会保障制度もメディケアも,たしかに万事順調ではないけれどそんなにわるいもんでもない.支給減額に固執するのはやめて,いまここで失業してる人たちに雇用をもたらす話に集中しよう.

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