2018年5月4日金曜日

スタンフォード哲学事典の「言語行為」を訳読しよう #17

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5.2 グライスの説明への反論


だが,聞き手に認知的効果やその他の効果を生じさせようとする意図は話者意味に必要でないという論もある.デイヴィスは,再帰的な伝達意図がない話者意味の事例をたくさん提示している (Davis 1992).[13],[14] 話者意味は聞き手に特定の効果を生じさせようとする意図の問題ではなく,じぶんの心的状態のなんらかの側面をあからさまに示す問題なのだと論じる研究者もいる (Green, 2007).オーバーコートを取り出しにクローゼットに行こうとしている場面(話者意味には該当しない)と,次の場合を比べてみよう:天候について激しく口論したあと,相手の視線をひしひしと感じながら,クローゼットの方へとツカツカ歩いて行き,扉を開けて,これ見よがしにコートを羽織る.さっきの場合よりも,この場合の方が,外で雨が降っていると当人が意味していると考えやすい.その理由は,じぶんの態度をあからさまにしている点にありそうだ:たんに態度を見せているだけでなく,態度を見せようとする意図をはっきりさせている.

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つづく.

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