だけど,できるかぎり明示した方がいい.主な理由は次の2つだ:
- 他人がその発言をたどりやすくするために
- 歪曲を防ぐために
こまかい表記法の話は脇に置いて,もっとカジュアルに出典を示す場合にも,たとえば次のような言い方では,第三者が当該の文章・発言を探し出すのにかかる手間(コスト!)は大きい――
- 「誰だったかがそう言ってます」(は?)
- 「クルーグマンがどっかでそう言ってます」(著作がめちゃくちゃ多いんですけど)
- 「クルーグマンがコラムでそう言ってます」(どこの?)
- 「クルーグマンが『ニューヨークタイムズ』のコラムでそう言ってます」(いつの?)
- 「クルーグマンが2014年8月17日の『ニューヨークタイムズ』コラム "Why We Fight War" で言ってます」
それに,検索してもぜんぜんでてこないかもしれない――誰かが言ったと思っていた発言がほんとは別の人の発言だったり,自分が覚えてるのとはまるでちがった趣旨だったり,そもそも誰も言ってなかったりするからだ.ツイッターのようなカジュアルな場所でも出典を明示すべき理由の2つ目がこれだ.
「そんなまぬけな記憶違いなんて,俺はしない」と思っていられる人は,おしあわせだ.「ああいう一節があったな」と思って引用しようと当該の文献をあたってみたら,思ってたのとちょっとちがうものだったなんて経験,ぼくはたくさんある.載っている文献が記憶とちがうものだった場合なんて,もっと多い.しっかり覚えていたつもりの当人がそのザマなんだから,他人に「ぜったいこういう発言があるんだから必要なら調べろ」なんて,とても言えない.
悪気はなくても,どんなに自信があっても,記憶から引用すれば,発言を歪曲するリスクを冒すことになる.
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