2014年9月4日木曜日

篠原健一『アメリカ自動車産業』(中公新書,2014年)

一月前に,ツイッターでつぶやいていた読書メモをこちらに写しておく.


篠原健一『アメリカ自動車産業』(中公新書,2014年)では,アメリカの自動車産業において,ブルーカラー層に強力な年功制度があることを解説している.「先任権」(seniority) により,勤続年数が短いものからレイオフされる順番が決まるというのが,その基本的な特徴.(第3章) 
定義された職務の範囲を超えて創意工夫をするインセンティブはなく(給与に影響なし),逆にしないインセンティブはある(他人の職務範囲の侵害).これと対比するカタチで,著者は日本の自動車産業においてブルーカラー層に査定と抜擢が適用される点を指摘している.
これを思いっきり単純化してしまえば,自動車産業において,日本は能力主義的,アメリカは平等主義的ってことになる. 
労働者がカイゼンに取り組むインセンティブがかつてのビッグ3には乏しかった.その制度を変えていくことに苦心しているさまが第4章「チーム・コンセプトという日本化」で叙述される.文章はよく整理されていて,ぼくのような門外漢にも理解に困る箇所は少ない. 
イノベーションがどうたらとか,日本版スティーブ・ジョブズがうんぬんとか雲をつかむような話じゃなくて,労使関係の制度と組織運営がモロに製品の品質とコストに響いてくるという,まことに堅実なお話でございます.

もとのツイートは次のとおり:

  1. https://twitter.com/optical_frog/status/496490559989506048
  2. https://twitter.com/optical_frog/status/496491116221321216
  3. https://twitter.com/optical_frog/status/496491570367954944
  4. https://twitter.com/optical_frog/status/496492336587632640
  5. https://twitter.com/optical_frog/status/496494931385397250


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