2018年3月11日日曜日

objectの多義によるダジャレ論法の候補を想像してみる

一連の論述のなかで、同じ言葉を使いながら断りなくキーワードの意味をずらしていくと、あたかも一貫しているかのように見えるが途中で根拠のない飛躍が生まれてしまう。こういう単語の多義を暗黙に切り替える論述を「ダジャレ論法」と呼ぶことにしよう。

さて、英語の object にもいくつかの意味があって、これがダジャレ論法に利用できるかもしれない。オックスフォード学習者英語辞典を引いてみよう:
「(文法用語)目的語」
((grammar) a noun, noun phrase or pronoun that refers to a person or thing that is affected by the action of the verb (called the direct object), or that the action is done to or for (called the indirect object)
「目的・目標」
(an aim or a purpose)  
例: The object is to educate people about road safety.「目的は、交通安全について人々を教育することである」
「見たり触ったりできるが生きてはいないモノ」(物体; この語義では「生きていない」という要素がある点に注意)
(a thing that can be seen and touched, but is not alive)
例: everyday objects such as cups and saucers 「カップやお皿といった日用品」
「欲求・研究・注目などの対象。誰がが欲したり研究したり注意を向けたりする人やモノ」(対象)
(object of desire, study, attention, etc. a person or thing that somebody desires, studies, pays attention to, etc.) 
この「対象」の箇所では、とくに「性的対象」(“sex-object”) を参照せよと注記している。「性的対象」の語義解説は次のとおり: 
「人格や知性ではなく性的魅力のみで注目される人物」
(a person considered only for their sexual attraction and not for their character or their intelligence)
字面はおなじ object のまま、暗黙に語義がずれる(あるいはわざとずらされる)ことで議論が飛躍したり混乱してしまったりすることがあるかもしれない。たとえば次のような戯画的なヘンテコ論法が想像できる:
  • 「欲求の object(対象)にすることは、その人物を object(モノ)にすることである」(日本語では成立しないダジャレだが、object の訳語を「対象物」にすると少しはごまかせるのかもしれない)
  • 「欲求の object(対象)にされることで、その人物は subject(主体・主語)でなくなってしまう」(なるほど文法の話であれば、単文で同じ名詞句が主語・目的語の両方であることはありえない;しかし、実際のある人が動作や欲求の対象とされたからといって、必ずしもその人が主体でなくなるわけではない。さらに言えば、文法的な主語は必ずしもみずから動作を行う主体=動作主とはかぎらない: e.g. “John was kissed by Mary.”)

こうしたダジャレ論法の実例に心当たりがあればコメント欄などでご教示くだされ。

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