- Paul Krugman, “Trump and Trade and Zombies,” New York Times, March 19, 2018.
二大ゾンビの片方は「ネオ重商主義」だ:貿易とは国々の戦いであり、いつでも貿易黒字は勝利、貿易赤字は敗北だと考える。でも、論理と歴史の両方でこのネオ重商主義はまちがっている:
貿易黒字は弱さのしるしになっている場合もよくあるし、貿易赤字は強さのしるしになっている場合もある(算数の問題として、国外に投資する以上に国外から投資をひきよせる国はかならず貿易赤字になる)。それでも、ネオ重商主義者の言い分にトランプは耳を貸している。もとからじぶんが聞きたいことにしか耳を貸さない人物だし、重商主義の誤りはトランプの直感にうまくハマるからだろう。
もう一匹のゾンビは金本位主義の一種、「ネオ黄金虫」(neo-goldbugs) だ:国の強さは通貨の強さではかられると考えて、ドルが強いと困る部分にはいっこうに目を向けないし、ドルが弱くないといけない場合がある理由も理解しない。このゾンビもさんざん反駁されている――クルーグマンも「ぼくは 1987年にこいつについて書いているのに!」と記している――のに、いまだに世間をウロついている。
トランプ政権でいちばん目立つネオ黄金虫はデビッド・マルパスだ。元ベアースターンズのチーフエコノミストだったマルパスもまた、あらゆることについて間違ってきたという記録保持者で、2011年に論説文でアメリカの経済的病理を癒すにはドルがもっと強くならなくてはいけない(それに金利も)と主張したことがある。当時の失業率はまだ 9パーセントだった。ドルが強くなれば事態は悪化していたはずだ。なぜなら、アメリカ製品が競争力を弱めることになり、貿易赤字は増大するからだ。
高失業率が長引いているこの状況こそ、まさに貿易赤字がまぎれもなく本当にわるいことになる状況だ。国内の財とサービスの需要を減らすことになる。さて、クドロー (Kudlow) もマルパスと同じ世界観を共有しているらしく、トランプに指名されたあとに、強いドルが必要と発言している。ところがその強いドルは、まさにトランプがアメリカの弱さのしるしと思っている貿易赤字をさらに悪化させることになる。
国際経済政策についてこういう相反した考えをもっている人たちを、どうしてトランプは登用しているんだろう?
答えはおそらくこういうことだ――トランプは、そもそも相反が存在していることに気づくほど問題を理解していないんだ。そして、論争のどちらの側も、ゆるぎない無知に居座る一般的な傾向をもっている。そういう人たちだからこそ、トランプに登用されるわけだ。かくしてトランプ政権ではしぶといゾンビどうしのぶつかり合いが展開されている。「ポップコーンでも抱えて鑑賞しようか」
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