2019年1月15日火曜日

マクファーレン「評価文脈相対主義」を訳読してみよう #03

つづき.


未来の偶発事 Future Contingents

「明日,海戦が起こる」("There will be a sea battle tomorrow") とテミストクレスが言う.その時点では,翌日に海戦が起こるかどうかは客観的には定かでない.テミストクレスの確言は正確なのか不正確なのか,どちらだろう? テミストクレスの確言は,それがなされた時点 (m_0) から評価すれば不正確で,海戦がなされた可能な未来の履歴 (history) で確言の翌日 (m_1) から評価すれば正確となるし,海戦が行われなかった可能な未来の履歴で確言の翌日 (m_2) から評価すれば不正確となる.こうして,相対主義は2とおりにわかれる.一方には超付値主義 (supervaluationist) があり,〔テミストクレスの〕確言は(絶対的に)不正確だと考える.だが,この考えでは,時点 m_0 で確言した当人がのちに確言を取り下げる必要がない理由を説明するのが難しくなる.もう一方には,「真性の未来主義」("true futurist") があり,こちらは〔テミストクレスの〕確言は絶対的に正確か不正確かのどちらかだと考える.2とおり可能な〔未来の〕履歴の対称性を崩す要素は〔発話時点の〕状況にはないにも関わらずだ.(MacFarlane 2003, 2008 参照;批判は Heck 2006 参照.)

こうした提案からは,意味論における根本的な問いが2つ生じる:

技術的な問い
この種の相対主義的な説明を取り入れるためには,標準的な真理条件意味論の枠組みにどのような修正が必要だろうか?


哲学的な問い
確言や信念が正確かどうかは評価相対的だというアイディアは哲学的にどう理解できるだろうか? こうした提案が言っていることを私たちは本当に理解しているのだろうか? 相対主義的でない理論と相対主義的な理論は,言語使用に関する予測がどうちがっているのだろうか?

以下の議論では,こうした問いそれぞれにどんな答えが与えられうるかを簡潔に見ていこう.

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