「道徳的美徳の性淘汰」は,もともと Quarterly Review of Biology に掲載された論文:
- "Sexual selection for moral virtues." Quarterly Review of Biology, 82(2):97-125.
で,最近ミラー先生が出した本にほぼ同じ文章が収録されてる.ぼくが見てるのはこっち:
- Geoffrey Miller, "Sexual selection of moral virtues," Virtue Signaling. Cambrian Moon, 2019.
『美徳シグナリング』の方についてるセクションの見出しはこんな感じ:
- 道徳的美徳と徳倫理学 Moral Virtues and Virtue Ethics
- コスト高シグナリング理論,適応度標示,道徳的美徳 Costly Signaling Theory, Fitness Indicators, and Moral Virtues
- よい遺伝子,よい親,よいパートナー Good Genes, Good Parents, and Good Partners
- 性淘汰されたシグナルと性差 Sexually Selected Signals and Sex Differences
- 道徳的な人を評価すること vs. 道徳的な行為を評価すること Evaluating Moral Persons Versus Moral Acts
- 恋人づきあいの美徳と道徳的美徳 Romantic Virtues and Moral Virtues
- 道徳的な障害レースとしての恋人探し Courtship as a Moral Obstacle Course
- 恋人探しにおける気前よさ Courtship Generosity
- 個人差の心理における道徳的特徴と準-道徳的特徴 Moral and Quasi-Moral Traits in Individual Differences Psychology
- 性格特徴 Personality Traits
- 精神的な健康の特徴Mental Health Traits
- 知性 Intelligence
- こうした特徴は本当に道徳的美徳として判断されるのか? Are These Traits Really Judged as Moral Virtues?
- 道徳的美徳は本当に性的に魅力をもつのか Are the Moral Virtues Really Sexually Attractive?
- 道徳規範と恋人にもとめる美徳の文化差はどうなのか? What About Cross-Cultural Differences in Moral Norms and Mate Preferences for Virtues?
- 性淘汰と均衡淘汰 Sexual Selection and Equilibrium Selection
- 道徳的美徳としての性的選り好みの強さ Sexual Choosiness as a Moral Virtue
- 道徳的美徳の性淘汰モデルからえられる予測 Predictions of the Sexual Selection Model for Moral Virtues
- 道徳的美徳の遺伝的特性 Genetic Features of Moral Virtues
- 道徳的美徳の表現型の特性 Phenotypic Features of Moral Virtues
- 道徳美徳による恋人選び Mate Choice for Moral Virtues
- 事例: 道徳的美徳としての性的貞節 Examples: Sexual Fidelity as a Moral Virtue
- 規範的倫理学に導き出される含意 Implications for Normative Ethics
追記: 『美徳シグナリング』で著者がつけてる前置きだけ訳したYO:
一見すると,「美徳シグナリング」は単純に思える.だが,美徳シグナリングは「人々は消費者としての選択や自分の政治姿勢を見せびらかすことで実態以上にすぐれているかのようにふるまう」というだけの話にとどまらない.それよりもずっと深みがある.この深みを理解するには,時をさかのぼって道徳的な美徳そのものの進化上のさまざまな起源にまで戻らねばならない.そうした起源は,すぐにそれとわかるほど自明ではない.根っこにたどり着くには,少しばかり掘り下げる作業が必要だ.この論考では,美徳の起源をこれまでで一番深く掘り下げている.また,本書の知的な核心でもある.それに,いまのところぼくの論考では一番長くて,一番体系的で,一番学術的だ――とはいえ,元の論文はできるだけ読みやすく鮮明に書こうとがんばってはいる.道徳的な美徳をもたらす性淘汰がわかったら,美徳シグナリングの心理的な基盤がわかる.はじめてのデートから,環境保護消費者運動,国の政治までがわかることになる.この論文を書いたのは,2008年にテニュアをとる前のことだ.当時,テニュアをのぞんでいたぼくは,トップジャーナルに大がかりな理論的論文を載せる必要があった.トップジャーナルに載れば,同僚たちがぼくを大きな構想を練ってる学者として真面目に扱ってくれるだろうという思惑でいたわけだ.Quarterly Review of Biology (QRB) なら,他のたいていの心理学ジャーナルよりも,ぼくの進化論的な論考に対して戸口を開いてくれるのはわかっていた.そこで,QRB にこれを書いた.いざ受理されたときには,ぞわぞわした.QRB は,それ以前にも利他性に関する画期的な論文をいくつか掲載していた.そうした論文は,のちにたくさん参照されていいる――著名なものだと,ロバート・トリヴァースの「互酬的利他性の進化」(1971年)がそうだ.同論文は,12,000回以上も引用されている.(学術業界の基準では,これは大した回数なんだよ.)ぼくは,大学院の頃からずっとヒトの親切と利他性の起源に関心を抱いていたし,この論文の10年前にも少しだけこれについて書いてもいる――2000年に出た『恋人選びの心』(The Mating Mind) では,「」('Virtues of good breeding') と題した1章をまるまるこの話題に割いている.でも,そうした論証を,一本の体系的で学術的にまじめなかたちにまとめたのは,この論文がはじめてだ.それまでに進化心理学・ゲーム理論・シグナリング理論・利他性・道徳哲学・恋愛について学んだことをすべて統合しようと試みてできあがったのが,これだ.元々の論文には,260本ほどの参照文献があった.執筆当時の2006年ごろに利用できた研究をふまえて,最善をつくして,そうした文献すべての実証的な主張を記載しようとつとめた.ここでは,読みやすて短い文章にするために,本文中の文献参照と文献表を省略している.また,アブストラクトも省いて,文章の体裁もあらためた.言い回しを変えたところも少しある.元の論文の全文をおのぞみなら,QRB の版元で購入できる: [URL]
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