2016年2月22日月曜日

「読書中に内なる声は聞こえる?」という心理学研究

イギリス心理学会のブログ BPS Research Digest で,こんな新研究を紹介してる:「読書中に内なる声は聞こえるのか?」 ――つまり,いましがた黙読したこのセンテンスを読み上げる「声」を経験するかどうか,という研究だ.

紹介されている論文は下記のもの(ぼくは未読):

上記ブログから,要点を箇条書きに書き出しておこう:


調査方法
  • 調査に利用したのは Yahoo! Answers(!).
  • 2006年から2014年の間に投稿された内なる声の現象に関連する質問24件を見つけ出し,読書中の経験を述べた136件の回答を集めた.こうして得た材料に繰り返し出現する主題・内観を著者は分析した.


内なる声を経験するかどうかについて
  • 回答の 82.5 パーセントは「経験する」,10.6パーセントが「経験しない」だった.残りは不明.
  • 「経験する」という回答のうち,13パーセントはたまにしか経験しないと述べていた.


▼ 内なる声は誰の声か
  • 読書中に内なる声がいつも同じ声なのかさまざまな声があるのか,という点でも回答はわかれる.
  • 聞く声がさまざまに異なるという人たちによれば,「読んでいる物語の登場人物によって異なる」「・テキストメッセージやメールであれば送信者によって異なる」という.
  • また,聞く声が同じで変わらないという人たちによれば,通例,聞こえるのは自分の声だ.
  • ただし,声の高低や情動的な調子などで自分が実際に話す声とは異なる場合もよくある.
  • また,ものを考えるときの内なる声とまったく同じという人たちもいる

この読書中の内なる声というテーマには,研究以前の思い込みがあるという指摘が面白い.
どうしてこの話題がこれまで研究されてこなかったのだろう? Vilhauer の研究から,答えの一端が垣間見える.というのも,彼女によれば,読書中の内なる声の経験はみんな自分と同じだと多くの人は想定しているのだ.これは,双方向にはたらく.まず,内なる声が読書中に聞こえる人たちは,これが正常なのだと確信している:「とくに読書中はそうですが,私たちは誰だって頭のなかでいろんな声が聞こえますよね.知り合いの声だって聞こえます」と,とある Yahoo の投稿者は述べている.だが,内なる声がしない人たちにとっては,それが正常に感じられる.たとえば,読書中に内なる声が聞こえる人は自分以外にもいますか,と訊ねる質問投稿に対して,ある回答者はこう書いている――「ないですよー.検査してもらった方がいいですね.」 すると,別の投稿者が大文字強調でこう書いた:「いや,ヤクはキメてないから」
Why hasn't this topic been studied before? Vilhauer's study hints at an answer because she found that many people assumed that their inner experiences when reading were shared by everyone. This worked both ways, so some of the people who had an inner reading voice were convinced of its normality: "We all hear our voices in our heads at times – even those of others we know – especially while reading," said one Yahoo contributor. Yet others who claimed to have no inner voice felt they were the normal ones. For example, in response to a question posted on the site about whether anyone else hears an inner voice while reading, one responder said "Nooo. You should get that checked out" and another wrote, in capitals: "NO, I'M NOT A FREAK".
たしかにそうで,ぼくは読書中にたいてい内なる声がしていて,みんなもそうなんだろうと思っていた.(もっと具体的に言うと,こうして文章をタイプしたりものを読んだりしてるときには「声」が意識される一方で,漫然と文字面を目でおいかけてるだけだったり集中してのめり込んでるときには(たぶん)声は聞こえてない,ような気がする)

2 件のコメント:

  1. 「声を口から出さすに読む」と「頭の中で読み上げてる」ような感覚になることを、「内なる声」と言うのなら、私にも聞こえているってことですかね?
    契約書の条文なんかを読み込んでいるときには、この声?聴こえていない気がします。
    この記事を読ませていただいてるときは・・・(^^;アラ覚えてない
    因みに、この文章を打ってる最中は、完璧に読み上げながらって感じです。(声は口から漏れてません)
    なんか「内なる声」の定義が解らないと、この文章じたいが馬鹿馬鹿しく感じてきますね(。-∀-)

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  2. 黙読しているときに「頭の中で読み上げてる」ような感覚という定義でかまわないと思いますよ.

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