2015年12月9日水曜日

語法メモ: "another $149"

中学校英語で another X といえば「もうひとつのX」「べつのX」だ.この X は,先行する文脈にあるモノと同じタイプを表す.

たとえば――

▼ 「もうひとつの」の語義にあたる例文:
  • (1) "Would you like another drink?" 「もう一杯いかがです?」(X='drink') [OALD]
▼ 「べつの」の語義にあたる例文:
  • (2) "The room’s too small. Let’s see if they’ve got another one."「この部屋は狭すぎるなぁ.べつの部屋がないか,みてみようか」 (X='room') [OALD] 
いずれも,共通してるのは X のインスタンスがまず1つあって,さらにもう1つの X のインスタンスを another X で表しているってところだ.

もちろん,それだけで話は終わらなくって,次のようにも使える:
  • (3) ‘Finished?’ ‘No, I’ve got another three questions to do.’ 「以上ですか?」「いえ,あともう3つ質問があります」[OALD]
この場合,another Xs と複数形になっていて,すでにすませた質問に加えて,さらにあと3つ質問があるといってる.こういう例では,もはや「X のインスタンスがもう1つ」という意味にとどまっていなくて,たんに「追加の」という意味にしかなっていない.ただ,もしかしたら,この例文の文脈ではすでにすませた質問が3つあって,さらにもう3つあるのかもしれない.つまり,3つ-3つというセットで考えてるのかもしれない.

次の用例では,たんなる「追加の」という意味がいっそうはっきりと見てとれる:
  • "(...) it’s another $149 for the Bluetooth keyboard"「Bluetooth キーボードにもう149ドルかかる」(The Verge)
もとの文章では,グーグルの Pixel C 本体が 499ドルで,さらに専用キーボードをそろえるなら「追加で149ドルかかる」と言っている.明らかに,another X の X に該当するのは '$499' じゃあない.しいて言えば,X=「購入代金」だろう.こういう用例はべつにめずらしいわけではないはずだ.

むかしばなしをすると,ぼくが公立中学校ではじめて英語を習ったとき,ネイティブの教員に other とちがって another には an- 「1つの」があるだろう,と言われた.なにかしら「1つ」という意味が another の用法にはあるぞ,と言われて「なるほどなー」と思ったもんだ.でも,another が含む「1つの」の意味は,上記 The Verge のような用例ではいっそう抽象的な単位になっているようだ.

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