2015年12月12日土曜日

"active shooter"

「経済学101」に銃乱射に関する短文を訳した:
文中に "active shooter" というフレーズがでてくる.直訳すれば「能動的発砲者」だ.

アメリカ国土安全保障省のブックレット『銃乱射:対処法』だと,こう定義されている:
「active shooter とは,閉じた場所や人で混雑した場所で能動的に人々を殺すか殺そうと試みる個人をいう.大半の場合に,active shooter は銃器を使用し,犠牲者の選別になんらのパターンも手法もない.」(An Active Shooter is an individual actively engaged in killing or attempting to kill people in a confined and populated area; in most cases, active shooters use firearms(s) and there is no pattern or method to their selection of victims. ) 
("Active Shooter: How To Respond," U.S. Department of Homeland Security, October 2008. )

ネット上の日本語記事だと「アクティブシューター」とカタカナ語にしてるケースが目につく.上記の記事では,一読して通じるように「無差別発砲者」と訳しておいた.

V-G-A! V-G-A!

たぶん,人によって実感が異なる話.

先日発表された VAIO S11 もキングジムの PORTABOOK も,形態もスペック面も大きく異なるけれど,ともにビジネスユーザーを対象とすることをうたっている機種だ.そして,どちらも VGA 端子(アナログRGB端子/D-sub15ピン端子)をつけてる.

VAIO の場合,11インチクラスの旧機種 VAIO Pro11 では HDMI 出力があって VGA 端子はなかった.そこを逆に変えてきたわけだ.だから,「なんだよ,いまだにVGAをつけているのかよ」って話じゃなくって,はっきりと「ビジネス用途では VGA の方が必要とされている」と判断してるのがわかる.

いわゆるビジネスユースとはちがうけれど,大学の教室設備をみても,この判断は正しいと思う.残念ながら,多くの大学では PC からプロジェクタへの出力に使えるのは VGA 端子ばかりで,いまやけっして新しくはない HDMI での出力ができる場合はほんとに少ないからだ.

あくまでぼく個人の経験してる範囲にとどまってしまうけれど,いま複数の大学で利用している教室のうち,HDMI 接続ができるのはただ1つ,語学の CALL 教室だけだ.あとはすべて,VGA での接続しかできない.教室に備え付けのプロジェクタだけでなく,持ち運び可能なタイプのプロジェクタを貸し出している大学でも,HDMI 対応の機種があるケースはあまりない(し,あっても誰かに使われている).

おそらく,たいていの大学で,教室設備の更新はものすごくゆったりとしかすすんでないんだろう.もっと一般的に,日本の多くの職場でも,事情は大きく変わらないんじゃないかと思う.そういう環境では,「ビジネス用途」のモバイル PC において HDMI よりも VGA の方が優先度が高くなるのは当然といえば当然だ.

でもまあ,機器を更新するほどの余裕がないっていう,切ない話ではある.

2015年5月にでた VAIO Pro13 Mk2 の開発者インタビューで,こういう発言もある:
前のVAIO Pro 13は日本だけでなくグローバル市場での商品性を意識した製品だった。VGAとEthernetは日本市場に限って言えばニーズは非常に大きいのは分かっていたが、日本以外の市場だと、なぜこんなレガシーなポートが付いているのだ、と言われてしまう。しかし、新生VAIOでは日本市場にフォーカスした製品を作ることになり、セキュリティへの観点から有線を使いたいニーズのためにEthernet端子を、さらにプロジェクターに直接接続したいというニーズのためにVGA端子は追加することにした
(「ビジネス寄りに進化したVAIO Pro 13 | mk2開発者インタビュー」;強調は引用者によるもの) 


このあたりの事情は,ふだんの環境がちがうとまったくぴんとこないかもしれない.




このあとは愚痴.

いま,ぼくが主に仕事で使ってる PC は VAIO Duo13 で,これには VGA がなくって HDMI 端子しかない.しかたないので,VGA 変換アダプタをかましてつないでいる.「つながるならそれでいいじゃん」と思うかもしれないけれど,HDMI→VGA の変換アダプタを使うと,オーディオ端子からの音声出力は無効になってしまう.授業でなにか音声をながす必要があるときには,USB でサウンドカードをつないで,そこから音声を出力するという手間をかけなくちゃいけない.プレゼンタのレシーバに USB 端子を必ず1つ使うので,これで2つしかない USB 端子がふさがってしまう.学生からプレゼン用ファイルを USB メモリで受けとるとなると,いちいちどっちかを外すはめになる.それに,かんじんのアダプタを忘れてきたり不具合が起きたりすれば,それでいっきに詰んでしまう.

ともあれ,PCやタブレットが進化していっても,それをとりまく使用環境がおうおうにして旧式にとどまったままだと,メーカーとしても一種の退歩を選ぶのが正しい設計コンセプトになっちゃうんだね,というまとめでどうだろう.

2015年12月10日木曜日

鏡映しの権威主義者

思いつきだけ投げっぱなす:
  • 自分と対立する「あいつ/やつらは,権威者Aの言うことを,その権威ゆえにとにかく盲信する連中である」と考える.
  • すると,当該の「あいつ/やつら」に対する攻撃として,権威者 A の権威をターゲットにするのは有効に思える.
  • ところが,実は「あいつ/やつら」は *そこまで* 権威主義的ではない.
  • 結果として,「あいつ/やつら」への戦術として採用された権威者 A の権威への攻撃が際立つことになる.
  • こうして,みずからは必ずしも権威主義者でないにも関わらず,権威者 A の権威を異様に重視して攻撃するふるまいが生じる.

Marginal Rovolution大学@YouTube

「経済学101」でぼくがよく選んで訳してる経済学ブログ Marginal Revolution は,経済学者のタイラー・コーエンとアレックス・タバロックが運営している.

このコンビは,経済学のオンライン教育プラットフォームもやってる.その関連動画は YouTube を利用していて,いまのぞいてみたら,ずいぶん数があって充実してるみたいだ.
教科書 Modern Principles of Economics の動画は,ずいぶんと豪勢なつくり:




2015年12月9日水曜日

語法メモ: "another $149"

中学校英語で another X といえば「もうひとつのX」「べつのX」だ.この X は,先行する文脈にあるモノと同じタイプを表す.

たとえば――

▼ 「もうひとつの」の語義にあたる例文:
  • (1) "Would you like another drink?" 「もう一杯いかがです?」(X='drink') [OALD]
▼ 「べつの」の語義にあたる例文:
  • (2) "The room’s too small. Let’s see if they’ve got another one."「この部屋は狭すぎるなぁ.べつの部屋がないか,みてみようか」 (X='room') [OALD] 
いずれも,共通してるのは X のインスタンスがまず1つあって,さらにもう1つの X のインスタンスを another X で表しているってところだ.

もちろん,それだけで話は終わらなくって,次のようにも使える:
  • (3) ‘Finished?’ ‘No, I’ve got another three questions to do.’ 「以上ですか?」「いえ,あともう3つ質問があります」[OALD]
この場合,another Xs と複数形になっていて,すでにすませた質問に加えて,さらにあと3つ質問があるといってる.こういう例では,もはや「X のインスタンスがもう1つ」という意味にとどまっていなくて,たんに「追加の」という意味にしかなっていない.ただ,もしかしたら,この例文の文脈ではすでにすませた質問が3つあって,さらにもう3つあるのかもしれない.つまり,3つ-3つというセットで考えてるのかもしれない.

次の用例では,たんなる「追加の」という意味がいっそうはっきりと見てとれる:
  • "(...) it’s another $149 for the Bluetooth keyboard"「Bluetooth キーボードにもう149ドルかかる」(The Verge)
もとの文章では,グーグルの Pixel C 本体が 499ドルで,さらに専用キーボードをそろえるなら「追加で149ドルかかる」と言っている.明らかに,another X の X に該当するのは '$499' じゃあない.しいて言えば,X=「購入代金」だろう.こういう用例はべつにめずらしいわけではないはずだ.

むかしばなしをすると,ぼくが公立中学校ではじめて英語を習ったとき,ネイティブの教員に other とちがって another には an- 「1つの」があるだろう,と言われた.なにかしら「1つ」という意味が another の用法にはあるぞ,と言われて「なるほどなー」と思ったもんだ.でも,another が含む「1つの」の意味は,上記 The Verge のような用例ではいっそう抽象的な単位になっているようだ.