ちょっと前に有線イヤホンを買う下調べをしていて,しばらく遠ざかっていたオーディオ界隈をちょっとのぞいてみたんだけど,数年でけっこう変化があったみたいだ.
以下,ただの素人の観察.
(1) 「中華イヤホン」の存在感がとても大きくなってる.ぼくが買った水月雨の Aria2 もそうなんだけど,eイヤホンの売り場でもたくさん並んでるし,日本語や英語でオーディオの話題を扱ってる人たちの話を調べてても,よく取り上げられてる.リンク先にあるcrinacle先生のランキングを眺めると,その感じがつかめるかと思う.
(2) スマホにつなぐドングル型DAC/アンプがたくさん出回ってる.スマホ側がイヤホンジャックを載せなくなったのが理由かな.Apple のアレくらいで十分という声もあるけれど,こだわる人はここにけっこうな高級機種を使うっぽい.
(2.1) スマホからイヤホンジャックが消えてるのは,bluetoothの無線接続,とくに完全ワイヤレスイヤホンが普及していったのと軌を一にしてる.とくに Apple の AirPods シリーズは「iPhone ユーザーならこれも使ってね,てか当然使いますよね?」くらいの勢いを感じる.Android スマホだとそういうエコシステムへの囲い込みはもっと弱い.安価なモデルからハイエンドまで完全ワイヤレスが普及してスマホにイヤホンジャックを載せる意義が薄れたし,スマホにイヤホンジャックがないから気楽に音を聞くのに完全ワイヤレスイヤホンをもっておく意義が強まった.
(3) 他方で,Walkman みたいな専用の音楽プレイヤーは,難しい位置にあるみたい.ストリーミングで音楽を聴くなら,プレイヤー側がアプリを動かせないといけない.すると,それこそ今の Walkman みたいに Android 搭載端末をつくることになって,「それって高性能なDAC/アンプを載せてる以外はほぼスマホですよね?」という機種がうまれる(なぜか性能の低いSOCを載せていて使い勝手はだいぶよくないらしい).というか,ずばり音楽用スマホっていうニッチなモデルも水月雨から出てる: 「MIAD 01」.ずっと前には,オンキヨーの GRANBEAT もあった.でも,そういう機種は,高価格なのにバッテリー劣化と OS/アプリのアップデートの限界で,数年で使い勝手が悪くなってしまう.「それでもかまわん!」という強火のユーザーじゃないと選ばない本当にニッチな存在かもしれない.
(4) それと関連して,オーディオ好きな人たちの間では,なんだかバランス接続が当たり前みたいになってる.ずっと前にソニーが対応アンプと合わせてヘッドホンの MDR-Z7 なんかでバランス接続を売りにしたときにはまだまだ珍しかったけれど,いまは当たり前の選択肢になってるみたい.で,DAC/アンプはたいていバランス接続端子と従来の 3.5mmアンバランス接続端子の両方を用意してる.規格は 2.5mmとかもあったらしいけど,もう 4.5mmが標準みたいになってる.
(5) ところで,本来の意味での "DAC" は文字どおりデジタル信号をアナログ信号に変換する回路のことで,音楽プレーヤーから完全ワイヤレスイヤホンまでもれなく DAC は載ってるわけだけど,その意味での DAC とアンプを搭載した小型機器を DAC って呼ぶケースもあるみたい.
(6) バランス接続とも関連して,イヤホンと機器をつなぐケーブルを交換する「リケーブル」も人気らしくって,売り場でそういうケーブルだけを扱うスペースもできてた.レビューを読んだり聞いたりしてると,「リケーブルで音が変わった」なんて話が当たり前みたいに出てくる.このへんになると,ぼくはちょっとついていけない.
(7) イヤチップがさらに充実してる.ぼくが愛用してたコンプライもまだ売られてるけれど,それはちょっと古いらしくって,新素材を採用したイヤチップが各社から出てる.なかには左右ペアで4,000円近くする商品もあって,ちょっとたじろいだ.装着感をよくする点では,これはぼくにも理解できる.
こういう変化は,オーディオ技術の進化と消費者のニーズの変化を反映しているようだ.中華イヤホンの台頭や完全ワイヤレスイヤホンの普及は,市場の多様化と新しい使用シーンの出現を示している.一方で,高音質を追求するユーザー向けの製品も進化を続けていて,バランス接続やDAC/アンプの普及がそれを物語っている.ただ,専用音楽プレーヤーの位置づけが難しくなっているのは,スマートフォンの高機能化とストリーミングサービスの普及による影響が大きそうだ.
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