2016年11月23日水曜日

ミラー先生の『消費』のサンプル訳をつくってみよう (22)

つづき: 
生産指向からマーケティング指向への移行はまだ進行中で,制度から個人への決定的な権力移転をなしとげた人類史上で最重要の革命なのに,依然として理解されていない.生産でぇあ,労働者は技術の召使いになった.理想では,マーケティングでは消費者が技術の主人になる.マーケティングのん熱烈な支持者なら,マーケティング革命のおかげでマルクスなんてほぼ無意味になったとすら考えるかもしれない.「消費者たちのいろんな欲求をみたすために企業がこれほど必死になる時代に,いったい「疎外」や「搾取」がどんな意味をもちうるっていうんだ?」――彼らはそう思うかもしれない. 
一般論を言えば,知識人はいまだにマーケティングを理解していない.右派の経済学者の目にはマーケティングがほぼ見えていない.「人々がもとめるモノやサービスを生産するのに市場が必要とする需要と供給の情報はすべて価格が運んでくれる」と彼らは考える.アダム・スミスやフリードリヒ・ハイエクやミルトン・フリードマンやゲイリー・ベッカーといった経済学者たちの世界観では,市場調査なんかに役どころはない.これと対照的に,左派の社会科学者やジャーナリストやハリウッドの脚本家たちには,「マーケティングなんて強欲な企業が人々を捜査する広告にすぎない」としか思えない.かしこくも 左派のみなみなさまが企業人ごときと言葉を交わしてくださることなんて滅多にないので,現代の企業は『ロボコップ』にでてくる悪の巨大企業「オムニ・コンシューマ・プロダクツ」(通称「オムニ社」)みたいなことをやってるんだろうと彼らは思っている.たまたまけっこうな財産を手に入れる大学教授がまれにいるけれども,彼らにしても,大いに気にかけるのは投資であってマーケティングではない.投資の助言はいたるところにある(CNBC,フォックス・ビジネス・ネットワーク,個人向け資産運用雑誌)けれど,マーケティングの知識はこすいた金融商品の営利主義を支えるなにやら不可解な魔法として潜んでいるからだ.
1つ問題なのは,あらゆる専門家や大学人と同様にマーケターたちも独特な用語や概念を使ってじぶんたちの専門知識をひけらかすので,聞かされた門外漢はひたすら困惑するほかない,という点だ.しいたげられたサブカルチャーが内輪だけの隠語を使っている分には,かわいらしく聞こえる.だが,すさまじい経済的な火力をもちあわせているマーケターたちが同じことをやると,名調子の陰気な呪文のように聞こえる.ちょうど,ペンタゴンがやたら使う VP だの KP だの MIA だのの頭文字略語のようなものだ.2006年の「インテリジェントな印刷・包装カンファレンス」で飛び交った次の文言をとりあげよう.出典は,SF作家のブルース・スターリングがブログに投稿した記事だ. 
・「我が社のメタル有機的アプローチ vs. 現行テクノロジーの問題である」
・「サーモクロミック・インクこそ,ニューミレニアムのペットロック・インクです」
・「もはや印刷ならざる印刷のためのタクソノミーが求められているのです」
・「電子ダンボールにより印刷オブジェクトと仮想世界の境界がゆらぐ」
・「伝導性ポリマーにおける・「バブル・バブル・トイル・トラブル」であります」 
こうした奇怪な言葉も,きっとなにごとかを意味してはいるにちがいないけれど,具体的にどんな意味なのだか判然としない.

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