2013年9月24日火曜日

(not SCP)

画像フォルダを整理していたら,去年ふたばで「」たちが話題にしていたものがでてきた.




グーグルマップ

2013年9月16日月曜日

今日のクルーグマン:「雇用にチャンスを」(2013年9月15日付)

原文:"Give jobs a chance," New York Times, September 15, 2013.


今週,アメリカ連邦準備制度理事会の公開市場委員会が金融緩和の手じまい (tapering) を公表するだろうと予想されるなかで,今日のコラムでは「やめろ」「手じまいすんな」と主張.早期に手じまいをしてしまった場合のリスクと,手じまいが遅れた場合のリスクを比較すると,前者の方が圧倒的に大きい,というのがその根拠だ.

早期に手じまいをしてしまった場合,まだまだ完全雇用にほど遠く,むしろ緩和を継続すべきなのに引き締めに転じてしまうと,景気の低迷を続けて失業者を増やしてしまう.このコストはとても大きい.

他方,手じまいが遅れた場合には,完全雇用が達成されてもしばらく金融緩和がなされて,インフレを加速してしまう――けど,そもそもいまは連銀のインフレ目標 2% すら下回っているし,クルーグマンや他の経済学者(たとえばIMFの主席エコノミスト)は 4% 目標の方がのぞましいとすら考えている.したがって,余計にインフレを加速してしまったとしても,そのコストは問題にならない.

この2つを比べれば,かりに判断ミスだったとしても引き締めに転じるのが遅れる方が,その逆よりもずっとマシであり,したがって「経済成長によせて間違う方が賢明というものだ」(to err on the side of growth is wise) とクルーグマンは述べる.

2013年9月14日土曜日

クルーグマン『そして日本経済が世界の希望になる』(PHP新書,2013年)

出たので読んだ:クルーグマン『そして日本経済が世界の希望になる』(PHP新書,2013年).「アベノミクスの金融政策・財政政策は正しい,いいぞもっとやれ」という話を中心に,日本の各種制度についての提言や,今後の世界経済の展望なども語った一冊.日本オリジナル版.

[1] 本のなりたち:訳者でもある大野氏によるロングインタビューとメールでの質疑応答をもとに,語りおろしによる全5章の論述に構成されている.

[2] 骨子はきわめて明快だ――安倍政権が掲げる経済政策のうち,(1) そもそもクルーグマン自身が推奨していたインフレ目標政策は有効だしできればインフレ率4%くらいが望ましい;(2) 財政政策は「その積極的な拡大を行う必要がある」(p.39);しかし (3) 構造改革は重要でない:「為政者は誰もが構造改革を約束するが,そうした態度自体を私は疑っている」(p.48).(それぞれの論拠と,よくある異論に対する批判は,自分で確認してね.)

[4] ついでながら,(2) の財政政策については,研究の進展を経て,かつてと意見を変えたことをはっきりと述べている.

[5] また,直近の争点である消費税増税には明快に反対している:「日本に対してIMFやOECDはしきりに消費増税の実施を要求しているが,いったい何を考えているのか,私には理解できない」(p.129).97年の橋本増税は失敗したじゃないか.また,歴史をみれば,債務比率が高かった国,たとえばイギリスは,かつて債務がGDP比200%を越えていたのが70年代には50%にまで下がった.痛みに耐えて財政再建にはげんだのではなく,「穏やかなインフレと経済成長を両立させながら,少しずつ均衡策を実施していった」「ここに,日本が参考にすべき手法がある」(p.127).

[6] 訳文について:大野氏による翻訳は,じゅうぶんに自然に読み進められる文章にしあがっている.おなじみの山形浩生式のカジュアル文体とはちがうので,ぼくのように少し惜しむ読者もいるだろうし,逆に,かえって読みやすいと感じる人もいるだろう.

Apple Pro Speakers をふつーのアンプにつないで鳴らす

要旨】:Apple Pro Speakers のケーブルの中身はふつーのスピーカーのケーブルと同じなので,かんたんな加工でアンプに接続したらちゃんと鳴ってくれたよ.でも,マネするかどうかは自己責任でね.


1. 前置き


先日,とある先生からほぼ未使用状態の Apple Pro Speakers をゆずってもらいました.なかなかきれいなデザインのスピーカーで魅力的ではあるものの,困ったことにアップル独自仕様のプラグで,ふつーの機器にはつなげられないかのように見えます.でも,せっかくの美麗品だし,どうにか鳴らしてみようと調べてみました.結論としては,実にかんたんに鳴らすことが出来ます.



[開封:びっくりするほどの美麗品でございました]

2013年9月1日日曜日

今日のクルーグマン:「救われざる世界」(2013年8月29日)

昨日のクルーグマンのコラムは,「インドネシアとインドの通貨安は次のアジア危機につながるのか」という懸念について,そこはおそらく心配ないけど,金融危機からちっとも学んでないのはいいかげんどうにかせーよ,とのお話:

Paul Krugman, "The Unsaved World," New York Times, August 29, 2013

以下,コラムの概要をみておきましょう.

まず,90年代のアジア危機についておさらいしてる:当初,通貨安はドル立ての債務が資産に対して膨らみ,経済の深刻な収縮につながったけど,その後,まさにその通貨安が輸出主導の景気回復をもたらした.いちばん打撃を受けたインドネシアも,6年後の2003年には危機以前のピークを越えている.

ただ,このアジア危機は金融規制緩和の不安定性について実物教育になってしかるべきだったのに,そうはならなかった.グリーンスパンやらサマーズやらは経済を救った面々として称えられた.そして,それから10年後,2008年危機がおきる.

インドネシアは98年に13%の収縮という悲惨な状態になったあと,2000年には堅調な回復がはじまって2003年には危機以前のピークを超した.他方,ギリシャは2007年に20%の収縮,しかもまだ落下は続いてる.この10年で危機以前の水準に戻ることはなさそう.

要因の1つは,90年代のインドネシアには自国通貨があって21世紀のギリシャにはないということ.でも,それだけでなく,政策担当者がかつての方が柔軟に対応していた,とクルーグマン.アジア危機でIMFは当初緊縮を求めたけどまもなく方針転換した.でも,いまだに,ギリシャへの緊縮要求はきびしい.緊縮策の失敗が重ねられればそれだけ,なおさらに血を流すことが要求されている.

で,欧州の次はアジアで危機が起こるだろうか? おそらく,それはない.インドネシアはかつてよりも外国債務の割合が減っているし,自国通貨がある.インドはさらに外国債務が少ない.だから,90年代危機の再現は,見込み薄だ.

でも,それはそれとして,かりにいま危機が回避されたとして,2008年危機の下ごしらえをした連中が90年代の危機では「世界経済を救った」なんて称えられていたのを忘れちゃダメよ.おしまい.

――という内容でした.

このコラムに先だって,クルーグマンはブログでアジア危機と欧州危機を対比しています ("The Asian Crisis Versus The Euro Crisis").メモとして,グラフだけ引用しておきましょう.

まず,インドネシア・マレーシア・タイの1人あたり実質GDPの推移を,1997年を100として示しているグラフ:



次に,アジア危機におけるインドネシアと,欧州危機におけるギリシャ,それぞれの危機以前のピークを100とした実質GDPの推移(ギリシャは2007年を起点としてあり,6年目以後はIMFの予想によるもの):


さきほどのコラムで述べられていたように,インドネシアは危機のあと大きく落ち込んだ後に,堅調な回復を見せています.他方,ギリシャは2007年から現在まで,ずっと落ち込みが続いています.