哲学者シドニー・モーゲンベッサーといえば,ジョン・オースティンの講演でこんな発言をした人物として知られているんじゃないかと思う:
オースティン「二重否定で肯定を表す言語はありますが,二重肯定で否定を表す言語はないのです」
モーゲンベッサー「はいはい」("yeah, yeah")
そのシドニー・モーゲンベッサーが死去したとき,各所でその逸話が語られていた.そのひとつ:
シドニー・モーゲンベッサーがレストランに来て,夕食を楽しんだ後,ウェイトレスにデザートは何があるかとたずねる.「アップルパイとブルーベリーパイがありますよ.」 「ではアップルパイをもらおう.」 そのあとすぐにウェイトレスが戻ってきて声をかける.「チェリーパイもありますが.」 そこで,シドニー・モーゲンベッサーは言う.「そういうことなら,ブルーベリーパイをもらおう.」
“Sidney Morgenbesser walks into a restaurant, has dinner, and then asks the waitress what they have for dessert. She says apple pie and blueberry pie. Sidney Morgenbesser says he’ll have the apple pie. She comes back in a moment and says that they also have cherry pie. So Sidney Morgenbesser says “In that case, I’ll have the blueberry pie.”
出典は Crooked Timber のコメント欄で,ほんとうにそんなことがあったのか定かではない.野球コーチのヨギ・ベラ語録みたいなネタなんだと思う (via Language Log).
スティーブン・ピンカーが新著 Rationality で,合理的選択の公理のひとつ「独立性(無関係な選択肢からの独立)」を解説する際にこのネタを引用している.